希望の線径を実現する伸線加工

伸線加工とは

伸線加工(しんせんかこう)とは、金属素線(ワイヤー)をダイス(引き抜きダイス)と呼ばれる穴の空いた工具に通し、引き抜くことで線径を細くする塑性加工法です。英語では「Wire Drawing(ワイヤードローイング)」とも呼ばれます。

加工の基本原理は「塑性変形」にあります。金属は弾性限界を超えた力が加わると永久変形します。伸線加工ではこの性質を利用し、ダイスの孔径よりやや太い素線を引き抜くことで、断面積を減少させながら長さを延ばします。一度の引き抜きで減面率が大きすぎると素線が断線するため、段階的に径を小さくするダイスを複数通過させながら目標線径まで仕上げるのが一般的です。

💡 伸線加工は「引き抜く」ことで形を変える加工です。圧延のように押しつぶすのではなく、素材を引っ張って細くするため、断面が均一に仕上がりやすい特長があります。また、必ず「細くする」方向への加工となるため、元の線径より太くしたい場合は別工法(鍛造・圧造など)が必要です。

伸線加工と圧延・押出加工の違い

金属線材を製造する方法は伸線加工だけではありません。代表的な3工法の特徴を比較します。

項目伸線加工圧延加工押出加工
加工原理ダイスに通して引き抜くローラーで圧延・延伸型から押し出して成形
断面形状円形・異形断面に対応板・帯状が主体棒・管・形材
得意な線径極細線〜中太線比較的太い線材向け太径〜形材
寸法精度高い(±0.001mm級も可)中程度中程度
表面品質良好(ダイス仕上げ)スケール除去が必要押出肌が残りやすい

圧延加工はロールで素材を挟んで延ばす工法で、板材や帯材の製造に適しています。押出加工は型から素材を押し出す工法で、複雑な断面形状を一度に成形できる反面、精度面では伸線加工に劣ります。寸法精度と表面品質を高いレベルで両立させる必要がある細線・極細線の製造には、伸線加工が最も適した工法です。

シンドーが取り扱う鋼線について

シンドーではステンレス鋼線を中心に、鉄・チタンなど幅広い材質の線材を調達・在庫しています。

  • ステンレス鋼線(SUS304・SUS316 等)
  • チタン鋼線

⇒ステンレスワイヤーの常時在庫一覧はこちら

💡 規格品として流通している線径(例:φ0.8mm・φ1.0mm・φ2.0mmなど)に当てはまらない場合や、特定の機械的特性が必要な場合に、伸線加工による特注線径の製造が選択肢になります。
※線径や寸法、要求精度によって対応可否がございますので、まずはお気軽にご相談ください。

伸線加工の工程・ステップを詳しく解説

伸線加工は単純に「引き抜くだけ」ではなく、複数の工程が組み合わさって品質の高い製品に仕上がります。以下は素材メーカーが行う伸線加工の標準的な流れです。

前処理(スケール除去・潤滑処理)

素材となる熱間圧延線材(ワイヤーロッド)には、製造工程で生じた酸化スケール(黒皮)が表面に付着しています。このスケールが残ったまま伸線加工を行うと、ダイスを傷つけたり、表面品質を著しく低下させたりするため、加工前に必ず除去します。

スケール除去の主な方法は以下の2種類です。

  • 機械的デスケーリング:ショットブラストや曲げ伸ばしなどで物理的にスケールを剥離する方法。短時間で処理できる。
  • 酸洗(ピクリング):塩酸や硫酸などの酸液にひたしてスケールを溶かす方法。仕上がりが均一になりやすい。

スケール除去後は、ダイスと素線の摩擦を低減するための潤滑処理を施します。石灰処理(ボンデ処理)や乾式潤滑剤(石鹸粉)の塗布が一般的です。潤滑が不十分だと断線の原因になるほか、ダイスの摩耗も早まるため、適切な潤滑処理は品質と生産効率の両面で非常に重要です。

ダイス引き抜き工程

前処理を終えた素線は、ダイスによる引き抜き工程に入ります。ダイスは超硬合金やダイヤモンドなどで作られており、コーン角(テーパー角)・ベアリング部・逃がし部などの形状が精密に管理されています。

引き抜き工程で品質を左右する主な管理ポイントは次のとおりです。

  • 減面率の管理:一度の引き抜きで断面積をどのくらい減らすかを示す「減面率」が高すぎると断線リスクが高まります。材質・線径・用途に応じた最適な設定が必要です。
  • 引き抜き速度:高速になるほど生産効率は上がりますが、発熱による品質劣化や断線リスクも高まります。
  • ダイスの孔径と形状:摩耗したダイスを使い続けると寸法精度が悪化するため、定期的な交換・管理が必要です。
  • 冷却・潤滑の連続供給:引き抜き中に発生する熱と摩擦を継続的に管理することで、安定した品質が保たれます。

焼鈍(アニーリング)と後処理

伸線加工を繰り返すと、金属内部に加工硬化(ひずみ)が蓄積し、素線が硬く脆くなります。この問題を解消するために行うのが「焼鈍(アニーリング)」です。素線を適切な温度に加熱・保持した後、徐冷することで内部応力を解放し、金属組織を再結晶化させます。

伸線後の後処理としては、目的に応じて以下が追加されます。

  • 矯正(ストレートニング):巻き取り形状に起因する残留曲がりを除去し、真直度を確保します。
  • 切断・巻き取り:最終製品の形態(コイル・カット品)に合わせて整えます。

シンドーにおける伸線加工の位置づけ

シンドーのメイン事業は、規格品として流通しているステンレス鋼線・チタン鋼線などを仕入れ、お客様の図面や用途に合わせて「切断・曲げ・溶接・電解研磨」といった二次加工を一貫して行うことです。

メイン事業(主な対応)オプション対応
規格品線材の調達 + 切断・曲げ・溶接・電解研磨希望線径への伸線加工 (協力工場ネットワーク活用)
ステンレス鋼線・チタン鋼線を中心に 試作から量産まで一貫対応規格品にない線径が必要な場合や 特定の機械的特性が求められる場合

規格品の線材で対応できる場合

ステンレス鋼線をはじめとした規格品線材は、φ0.8mm〜φ8.0mm程度の範囲で多くの線径が流通しています。シンドーはこれらを自社在庫として保有しており、お客様のご要望に合わせてすぐに切断・二次加工に入ることができます。材料調達から加工・仕上げまでを一括で任せられるため、リードタイムの短縮とコスト削減が期待できます。

💡 まずは「規格品で対応できるか」を確認することをおすすめします。規格品の活用により、伸線加工の追加コスト・リードタイムなしで目標仕様を実現できるケースが多くあります。

伸線加工が必要になるケース

以下のような場合に、規格品では対応できず、伸線加工による特注線径の製造が必要になります。

  • 規格品のラインナップに該当する線径が存在しない(例:φ1.35mmなど中間径)
  • 引張強さ・硬度・伸びなどの機械的特性を、規格品より厳しく管理する必要がある
  • 表面粗さや真直度など、規格品の品質水準では満たせない精度が求められる
  • 特殊な合金組成や熱処理条件が指定されており、既製品では対応不可

特注線径の製造後は、切断・曲げ・溶接・電解研磨まで一貫して引き受けることが可能です。

※線径や寸法、要求精度によって対応可否がございますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

伸線加工・線材加工に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 伸線加工と引き抜き加工は同じですか?

A. 厳密には「引き抜き加工」の中に「伸線加工」が含まれます。引き抜き加工は断面形状を変える加工全般を指し、棒材や管材の引き抜きも含む広い概念です。一方、伸線加工は主に丸断面の線材(ワイヤー)を対象とし、線径を細くすることを目的とした工法です。実務上は両者をほぼ同義で使う場合も多く、「線引き」とも呼ばれます。

Q. 規格品にない線径に変更したい場合も相談できますか?

A. はい、対応可能です。シンドーでは規格品の線材を使った二次加工(切断・曲げ・溶接)がメインですが、希望の線径が規格品にない場合は、協力工場ネットワークを活用した伸線加工にも対応しています。「この線径にしたい」という要望があれば、まずはご相談ください。規格品で対応できるケースもありますので、一緒に最適な方法をご提案します。

Q. 小ロット・試作でも対応してもらえますか?

A. はい、対応しています。シンドーでは「まず数個試作したい」というプロトタイプ段階から、月産数万個規模の量産まで、プロジェクトのフェーズに合わせて柔軟に対応しています。試作で形状・品質を確認してから量産へシームレスに移行できるため、開発コストと時間の削減につながります。