ばね用ステンレス鋼線|SUS304-WPA・WPBの違いも解説

最新技術や高性能製品の製造に不可欠な「ばね用ステンレス鋼線」。シンドーではステンレス鋼線を中心に幅広いラインナップを取り揃えております。

ばね用ステンレス鋼線
ステンレス鋼線・ばね用

ばね用ステンレス鋼線(JIS G 4314)に規定される「SUS304-WPA(A種)」と「SUS304-WPB(B種)」は、いずれもオーステナイト系ステンレス鋼線材(JIS G 4308)を原料とし、固溶化熱処理を施した後、冷間引抜きによる伸線加工を経て製造されます。両者を分けるのは伸線加工度の違いであり、この差が引張強さなどの機械的性質、および成形性(加工のしやすさ)に明確な違いをもたらしています。

項目SUS304-WPAA種)SUS304-WPBB種)
成形性・加工性良好 引張強さが抑えられている分、材料に粘り(靭性)があり、複雑な曲げ加工に対応しやすい。注意が必要 限界まで加工硬化させているため硬く、強い曲げでクラックやスプリングバックが発生しやすい。
ばね特性普通 許容応力が低いため、強い反発力を求める用途には不向き。極めて優秀 高い弾性限界を持ち、へたりにくく、強い反発力を発揮する。
市場流通量少ない(限定的) 需要が特定の用途に限られるため、流通量は少なめ。圧倒的に多い(業界標準) ステンレスばね線の代名詞であり、市場の大半を占める。
入手性・納期サイズによっては問屋に在庫がなく、材料メーカーからの取り寄せ(小ロット不可、長納期)となる場合がある。国内の多くの材料商社・問屋が各線径を常時在庫しており、小ロット・短納期での調達が容易。
コストパフォーマンス流通量が少ないため、小ロットで購入する場合は割高になりやすい。大量生産・大量流通のメリットにより、最も安定した安価な価格帯で推移している。
主な用途複雑な形状の曲げ加工品、ワイヤーフォーミング(線細工)、固定用クリップなど。圧縮ばね(押しばね)、引張ばね(引きばね)、ねじりばね、精密ばね全般。

ばね用ステンレス鋼線の選び方

原則として「SUS304-WPB」を第一選択とする

市場での圧倒的な流通性とコストメリット、そしてばねとしての基本性能の高さから、設計上の標準仕様はWPBとすることが推奨されます。

「SUS304-WPA」を選択すべきケース

ばね性(反発力)よりも「複雑な形状への曲げ加工性」が最優先され、WPBでは加工時に割れや大きな変形(スプリングバック)が生じて製造困難な場合に限り、WPAへの変更を検討します。技術的な必然性がない限り、コストや調達リスクの観点からWPAを積極的に選ぶメリットは少ないといえます。

ばね用ステンレス鋼線の取扱い一覧

適用鋼種SUS304、SUS302、SUS304N1、SUS316、SUS631J1
適用線径0.020mm~12.00mm
適用調質1/2H~H
適用仕上NB(標準仕上)、EB(光沢仕上)、UB(超光沢仕上)
適用被膜被膜無し、NF・NS・NP(Ni被膜)、RD(樹脂被膜)
適用規格JIS G4314 EN10270-3

ばね用ステンレス鋼線の特徴

  • 優れた耐食性:錆びにくく、過酷な環境下でも長寿命
  • 高強度と耐疲労性:引っ張りや繰り返しの曲げに強い
  • 耐熱性:高温環境でも安定した性能を維持
  • 美しい外観:光沢があり、装飾性にも優れる

これらの特性により、ばね用ステンレス鋼線は、屋外用途や医療機器、精密機器に幅広く使用されています。

ばね用ステンレス鋼線の種類

SUS304系

  • 汎用ステンレス鋼線:耐食性、加工性、強度のバランスが良い

SUS316系

  • 高耐食ステンレス鋼線:海水や薬品環境でも高い耐久性を発揮

SUS631(17-7PH)系

  • 析出硬化型ステンレス鋼線:高強度と耐疲労性に優れる

ばね用ステンレス鋼線の選び方

優先点選定基準
耐食性重視SUS316系ステンレス鋼線
コストバランス重視SUS304系ステンレス鋼線
高強度・高疲労性重視SUS631系ステンレス鋼線

ばね用ステンレス鋼線の化学成分表

硬鋼線の標準線径と仕様 

線径(mm)引張強さ(N/mm²)線径公差(mm)偏径差(mm)巻取釜径(mm)標準単重(kg)
SWASWBSWC

ばね用ステンレス鋼線に関するよくある質問(Q&A)

Q1. ばね用ステンレス鋼線はなぜ錆びにくいのですか?
A. ステンレス鋼線にはクロム(Cr)が含まれており、表面に形成される不動態被膜が錆を防ぐためです。

Q2. SUS304とSUS316の違いは何ですか?
A. SUS316にはモリブデン(Mo)が添加されており、SUS304よりも耐食性が高く、特に塩水や薬品環境に強いのが特徴です。

Q3. 高温環境に適したステンレス鋼線はどれですか?
A. 耐熱性に優れたSUS631系(17-7PH)ステンレス鋼線が推奨されます。高温下でも高強度を維持します。

Q4. 医療用途で使用できるばね用ステンレス鋼線はありますか?
A. はい、耐食性・生体適合性に優れるSUS316系ステンレス鋼線が医療機器用に広く使用されています。

Q5. 小ロットでの試作依頼は可能ですか?
A. メーカーや加工業者によっては、小ロット対応可能なところもあります。具体的な仕様に応じて相談が可能です。

ばね用ステンレス鋼線