ステンレス線入り防獣ネット用線材・周辺部材のOEM供給

イノシシやシカによる農作物被害への対策として、「ステンレス線入り防獣ネット」の需要が高まっています。通常の樹脂ネットより噛み切りに強く、電気柵や金網フェンスより安価で施工しやすいことから、農地や果樹園、山林境界などで広く使われている資材です。

このネットの性能を左右しているのは、樹脂糸に撚り込まれた「極細のステンレス線」と、ネットを地面や支柱に固定する「金具・金網」です。どちらもステンレス線材を出発点とする部材であり、ネットの完成品メーカーとは別の、線材加工メーカーが担う領域です。

本記事では、ステンレス線入り防獣ネットの構造と選び方を整理したうえで、ネットに使われるステンレス線材の要件と、固定金具・補強金網をOEMで供給する際の考え方を、ステンレス線材加工メーカーの立場からご紹介します。

1. ステンレス線入り防獣ネットとは

ステンレス線入り防獣ネットとは、ポリエチレンなどの樹脂糸に極細のステンレス線(φ0.2mm前後を数本)を撚り込んで編んだ防獣用のネットです。樹脂ネットの軽さと扱いやすさを保ちながら、動物が噛み切ろうとしたときにステンレス線が歯に当たって噛み切りを防ぐ、という設計思想でつくられています。

防獣資材として流通している製品は、目合い10〜16cm程度、高さ1.6〜2.5m、長さ20〜50m巻きが主流で、張り用のガイドロープが付属しているものが一般的です。獣害対策資材の中での位置づけは次のように整理できます。

  • 通常の樹脂ネット:安価で軽い。小動物や鳥向け。噛み切り・引き裂きには弱い
  • ステンレス線入り防獣ネット:噛み切り耐性を高めた樹脂ネット。イノシシ・シカ対策の入門〜中核資材
  • 金網フェンス(溶接金網・亀甲金網):物理強度が最も高い。重く、施工に手間とコストがかかる
  • 電気柵:心理的な忌避効果が高い。通電管理と草刈りなどの保守が必要

実際の現場では、これらを単独で使うのではなく、地形や対象動物に応じて組み合わせるのが一般的です。

2. 通常の防獣ネットとの違い|噛み切り・塩分・耐候性

ステンレス線入りネットが選ばれる理由は、主に3つあります。

噛み切りへの耐性

イノシシは鼻で押し上げるだけでなく、樹脂糸を噛んで切ることがあります。ステンレス線が撚り込まれていると、歯が糸を断ち切りにくくなり、穴を広げられるリスクが下がります。

塩分を含まない

一部の樹脂ネットは製造工程由来の塩分がわずかに残り、動物が舐めたり噛んだりする誘因になると言われています。ステンレス線入り製品の多くは、この点にも配慮して製造されています。

耐候性とコストのバランス

金網フェンスほどの強度はありませんが、数年単位の屋外使用に耐え、施工性と価格のバランスに優れます。

項目通常の樹脂ネットステンレス線入りネット溶接金網フェンス
主な材質PE・PPPE+SUS極細線SUS304・めっき鋼
噛み切り耐性低い高い非常に高い
潜り込み耐性低い(裾処理に依存)中(裾処理に依存)高い
耐用年数の目安1〜3年3〜5年10年以上(SUS304)
価格帯安価
施工性容易容易手間がかかる

※耐用年数は設置環境や動物の圧力によって大きく変わるため、目安として記載しています。

3. 対象動物別の選び方|目合い・高さ・張り方

ネットの性能を引き出すには、対象動物に合わせた目合い・高さ・張り方の選択が欠かせません。代表的な考え方を整理します。

対象動物目合いの目安高さの目安張り方のポイント
イノシシ10〜16cm1.0〜1.2m以上裾を地面に50cm〜1m寝かせ、潜り込みを防ぐ。裾の固定が最重要
シカ・カモシカ10〜16cm1.8〜2.0m以上飛び越え防止に高さを確保。支柱間隔を詰めてたわみを抑える
ハクビシン・アライグマ3〜5cm1.0m前後登られやすいため上部の返し(庇)や電気柵との併用が有効
タヌキ・キツネ5〜10cm1.0m前後裾の隙間から侵入するため、地面との密着を重視

※上表は一般的な設置例をもとにした参考値です。実際の仕様は各ネットメーカーの製品情報や自治体の指針に合わせてご検討ください。

共通して重要なのは、動物は「ネットの面」ではなく「固定部・裾・継ぎ目」という弱い部分を狙って侵入するという点です。次章で詳しく見ていきます。

4. 防獣ネットが「破られる」本当の原因は固定部にある

現場で防獣ネットの破損や侵入事例を追っていくと、ネット本体の面が破られるケースよりも、次のような周辺部の不具合が原因になっていることが目立ちます。

  • 固定ピンの錆・抜け:めっき鋼や鉄製のUピンが数年で錆び、地面から抜けたり折れたりして裾が浮く
  • 裾の持ち上げ:地面に寝かせた部分の押さえが弱く、イノシシが鼻で持ち上げて潜り込む
  • 支柱連結部の緩み:結束バンドや針金の劣化で、ネットが支柱からずれてたるむ
  • 継ぎ目・角部の隙間:ネット同士の重ね部分や出入口付近に隙間ができ、獣道が集中する
  • 獣道の集中箇所:同じ場所を繰り返し攻撃され、局所的に穴が広がる

つまり、ネット本体をどれだけ強くしても、ネットを支える金物の耐久性が先に尽きれば対策は破綻します。特に、ピンや金具は土中や地際で常に湿った状態にさらされ、農薬・肥料・融雪剤など腐食を早める要因が多い部位です。

ネットを製造・販売する資材メーカーの立場から見れば、「ネット本体の噛み切り耐性を支えるステンレス線」と「ネットの寿命を左右する固定部材」の両方を、どこから安定して調達するかが製品の完成度を左右します。以降の章では、この2つをステンレス線材加工メーカーとして供給する場合の考え方を整理します。

5. ネットに撚り込む「ステンレス線」|材料としての要件と供給

ステンレス線入り防獣ネットの噛み切り耐性は、樹脂糸に撚り込まれる極細ステンレス線の品質に大きく依存します。ネットメーカーが線材を選定する際、一般に検討される項目は次のとおりです。

検討項目内容ネット性能への影響
材質SUS304(オーステナイト系)が一般的屋外・雨水・農薬環境での耐食性。錆による断線を防ぐ
線径φ0.2mm前後(製品により異なる)太いほど噛み切りに強いが、撚り・編み立ての作業性と柔軟性は低下する
調質(硬さ)軟質〜半硬質など、撚り込み工程に合わせて選定硬すぎると撚り工程で折損・毛羽立ちが起きやすく、軟らかすぎると噛み切り耐性が落ちる
表面状態光輝仕上げ、伸線潤滑剤の残留量樹脂糸との撚り合わせ性、変色・錆の発生しにくさに影響
供給形態スプール巻き・コイル巻き、巻き量撚り機・編み機への供給のしやすさ、段替え頻度
ロット安定性線径公差、引張強さのばらつき製品ロット間での噛み切り性能・風合いの均一性

※上表は設計検討の出発点となる一般的な項目です。実際の仕様は各ネットメーカーの撚り・編み立て工程に合わせて決定されます。

当社はSUS304線材を自社で調達しており、線径・調質・巻き形態を指定したステンレス線材の材料販売に対応しています。ネット本体の製造ノウハウを持つ資材メーカー様が、線材の調達先として当社をご活用いただく形が、この分野での基本的なお付き合いの形です。

※当社の標準取扱範囲はφ0.8〜8mmのSUS304線材です。ネット用の極細線(φ0.2mm前後)については、対応可否・最小ロット・納期をシンドー様にご確認のうえ、本段落の表現を調整してください。対応外の場合は「φ0.8mm以上の線材(固定金具・補強部材用)の材料販売」に限定した記述に差し替えます。

6. ネット周辺のステンレス部材|資材メーカー向けOEM製作

防獣ネットの多くは「杭やピンは別途ご用意ください」として販売されており、固定部材は現場任せになりがちです。ネットと固定金具をセットで供給できれば、資材メーカー様にとっては製品の差別化と設置品質の底上げにつながります。当社では、こうした固定部材を資材メーカー・商社様のブランドで供給するOEM製作に対応しています。

部材線径の目安(SUS304)主な役割・形状
固定用Uピンφ4〜6mm裾を地面に固定。長さ20〜30cm、先端尖り加工、返し付きも可能
アンカーピン・杭ピンφ6〜8mm軟弱地・傾斜地での抜け防止。ねじり形状や大型頭部で保持力を確保
張線フック・S字フックφ3〜5mm支柱とガイドロープの連結。着脱しやすい開き形状
支柱連結クリップ・ばね金具φ2〜4mmネットを支柱にワンタッチで留める。ばね性を活かした設計
ロープテンショナーφ3〜5mmガイドロープの張りを調整し、たるみを防ぐ
裾押さえワイヤー・フレームφ4〜8mm寝かせた裾を面で押さえ、持ち上げを防ぐ

※線径は設計検討の出発点となる参考値です。用途・土質・対象動物に応じて調整します。

これらは形状こそ単純ですが、曲げ角度・先端形状・ばね性・長さの組み合わせで使い勝手が大きく変わる部品です。ステンレス線の曲げ・フォーミング・溶接を一貫して行える加工体制があれば、貴社ネットの寸法に合わせた専用金具や、施工者が扱いやすい形状への作り込みが可能になります。

なお、これらの部材は当社の自社商品として販売しているものではなく、資材メーカー・商社様からのOEM委託品として製作しています。農家・施工業者の皆様は、ネットとセットで販売されている各メーカーの製品をご検討ください。

7. 弱点を金網で補強する|溶接金網スカート・出入口パネルのOEM

固定金具に加えて、侵入圧力の高い部分だけをステンレス溶接金網で局所補強する「ネット+金網ハイブリッド」も有効な考え方です。全周を金網にするとコストと施工負担が跳ね上がりますが、弱点だけを狙って補強すれば、費用を抑えつつ防御力を高められます。資材メーカー様がネットのオプション品として展開する際、当社がOEMで金網部材を製作するケースを想定した内容です。

潜り防止スカート

ネットの裾に沿って、高さ50〜60cm程度の溶接金網を地面に寝かせて敷き、Uピンで固定します。イノシシが最も得意とする「掘る・持ち上げる」動作に対して、樹脂ネットより格段に強い抵抗力を発揮します。

獣道・角部・水路際の局所パネル

被害が集中する獣道や、ネットが張りにくい角部・水路際・段差部に、寸法を合わせた金網パネルを設置します。線径φ3〜5mm、目合い50〜100mm程度が一般的な検討範囲です。

出入口ゲート部

農作業用の出入口は、ネットでは開閉に耐えにくい部位です。フレームと金網を溶接一体化したゲートパネルにすることで、開閉を繰り返しても形状が崩れません。

溶接金網は線材の縦横交点をすべて溶接して格子をつくるため、切断してもほつれず、必要な寸法に合わせたパネル化が容易です。ネット本体を活かしながら、要所だけ金属で固める設計は、資材メーカー様の製品ラインナップを広げる選択肢になります。

8. 防ぐだけでなく「捕る」|捕獲カゴのOEM製作

獣害対策は、ネットや金網で「侵入を防ぐ」だけでは完結しません。周辺の個体数が増え続ければ、防御側の負担も増し続けます。多くの自治体や農業団体では、侵入防止と並行して捕獲カゴ(箱わな)による個体数管理を組み合わせる二本柱の考え方が採られています。

捕獲カゴについても、屋外に常設される・洗浄や消毒を繰り返す・塗装スチール品は数年で錆びる、という理由から、ステンレス製への切り替え需要が高まっています。当社では、防獣資材メーカー・わなメーカー様向けに、線材からの一貫生産によるステンレス捕獲カゴのOEM製作に対応しています。設計ポイントや対象動物別の線径・目合いの考え方は、別記事「ステンレス製捕獲かごのオーダーメイド製作」で詳しく解説しています。

※捕獲カゴの使用には狩猟免許や自治体の許可が必要となる場合があります。設計・運用にあたっては関係法令をご確認ください。

9. SUS304を使う理由|屋外常設・農薬・塩害環境

防獣資材の金具や金網に使われる材質は、大きく「鉄・めっき鋼」「塗装スチール」「ステンレス(SUS304)」に分かれます。初期コストは鉄系が有利ですが、屋外常設・土中・地際という条件では、耐食性の差がそのまま交換頻度の差になります。

  • めっき鋼:めっき層が傷つくとそこから錆が進行。土中では数年で保持力が落ちる
  • 塗装スチール:施工時の傷や曲げ部で塗膜が割れ、錆が始まりやすい
  • SUS304:素材自体が耐食性を持つため、傷ついても錆が進行しにくい。農薬・肥料・融雪剤への耐性も高い

数年ごとにピンや金網を交換し、その都度ネットを張り直す手間まで含めると、ライフサイクルコストではSUS304が有利になるケースが多くなります。資材メーカー様にとっては、「金物までステンレス」という仕様が製品の耐久性訴求の根拠になり、自治体事業や広域防護柵のような長期メンテナンス低減を求める案件への提案材料にもなります。

10. シンドーの対応領域|ステンレス線材の供給と周辺部材のOEM

株式会社シンドーは、1947年創業のステンレス線材加工メーカーです。新潟県燕三条エリアを拠点に、SUS304線材(φ0.8〜8mm)の自社調達から、曲げ・フォーミング・溶接・電解研磨・組立・検査・梱包までを一貫して手がけています。

防獣ネット分野で当社が対応できる領域は、次の2つです。

(1)ステンレス線材の材料販売

  • ネットメーカー・資材メーカー様向けのSUS304線材の供給(線径・調質・巻き形態は要相談)
  • 固定金具・補強部材を自社加工される資材メーカー様向けの線材供給

(2)周辺部材のOEM製作(資材メーカー・商社様向け)

  • 固定ピン・フック・クリップ・テンショナーなどの線材曲げ加工品の設計・試作・量産
  • 潜り防止スカート、局所補強パネル、ゲートパネルなどの溶接金網加工品
  • フレームと金網を溶接一体化した構造物、電解研磨による表面仕上げ
  • ネットとセット販売する固定金具キットなど、貴社ブランドでの供給
  • 自治体・農業団体向け案件は、元請けとなる資材メーカー・商社様を通じたOEMとして対応

材料を自社で調達しているため、線径や数量の変更に柔軟に対応でき、材料待ちによる納期の遅れも抑えられます。OEM製作は図面がなくても、ポンチ絵や現物サンプル、貴社ネットの仕様からのご相談で構いません。「このネットに合うピンを、この本数で、この価格帯で」といった具体的なご要望から設計を始めることができます。

一方で、当社が対応していない領域も明確にしておきます。ステンレス線を撚り込んだネット本体の製造・販売、防獣資材の自社ブランドでの販売、および農家・施工業者の皆様からのネット選定・設置方法に関する個別のご相談は承っておりません。ネット本体については、各資材メーカー様の製品情報をご参照ください。

11. よくある質問

ステンレス線材だけを購入することはできますか?

はい、材料販売として対応しています。線径・調質・巻き形態・最小ロットについては、用途をお伺いしたうえで個別にご案内します。

OEMは小ロットでも製作できますか?

試作数本から対応しています。まずは少量で現場評価を行い、その結果をもとに量産仕様を決める進め方をおすすめしています。

金網スカートやパネルのサイズは指定できますか?

線径・目合い・外形寸法・フレームの有無を含めて、貴社製品の仕様に合わせて製作します。傾斜地や水路際など、現場に合わせた変形パネルにも対応しています。

農家ですが、ピンや金網を直接注文できますか?

申し訳ございません。当社は資材メーカー・商社様向けのOEM製作を行っており、自社商品としての販売や、個別の設置に関するご相談は承っておりません。各メーカー様のネットとセットで販売されている固定部材をご検討ください。

12. まとめ

ステンレス線入り防獣ネットは、噛み切りに強く、施工性と価格のバランスに優れた獣害対策資材です。その性能は、樹脂糸に撚り込まれるステンレス線の品質と、ネット本体より先に劣化しやすい固定ピン・金具・裾の処理によって左右されます。

当社は、ネットに使われるステンレス線材の材料供給と、固定金具・補強金網・捕獲カゴといった周辺部材のOEM製作という2つの切り口で、防獣資材メーカー・商社様の製品づくりを支えています。線材からの一貫生産でご相談に応じますので、資材メーカー・商社の皆様はお気軽にお問い合わせください。