「自社ブランドの水切りかごを作りたい」「既製品の仕入れでは他社と差がつかない」「海外品の品質と納期に不安がある」。生活雑貨ブランドや通販企業、厨房機器商社の商品企画担当者から、こうした相談をいただく機会が増えています。
水切りかご・食器かごは、日用品でありながら「日本製」「燕三条」「ステンレス」という言葉が購買を左右する、素材と製造品質が価値になる商品です。本記事では、ステンレス線材加工メーカーの立場から、水切りかご・食器かごの構造と設計要素、製造工程、OEMでの進め方を解説します。

1. 水切りかごをOEMでつくるという選択肢
水切りかごの市場は成熟しており、大手量販店から専門ブランドまで多数の製品が並んでいます。この中で仕入れ品を並べるだけでは価格競争に巻き込まれやすく、自社の世界観に合った寸法・形状・仕上げの商品を持つことが差別化の軸になります。
OEM製造を検討する企業には、次のような背景があります。
- 自社の売場・カタログ・ECに合わせた寸法や意匠の商品を、自社ブランド名で展開したい
- 海外調達品の溶接不良・錆・寸法ばらつきによる返品やレビュー低下を減らしたい
- 「日本製」「燕三条」を商品価値として正面から訴求したい
- 厨房・給食設備の付属品として、既製品にない仕様の食器かごが必要
水切りかご・食器かごは、その多くがステンレス線材を曲げて溶接した「ワイヤー製品」です。したがって、線材加工に特化したメーカーと直接組むことが、品質とコストの両面で合理的な選択になります。
2. 水切りかごの種類と構造
一口に水切りかごと言っても、設置場所と用途によって構造は大きく異なります。
| 区分 | タイプ | 特徴 |
| 家庭用 | 据置型 | シンク横に置く最も一般的な形。トレーとの組み合わせが基本 |
| 家庭用 | シンク渡し・伸縮型 | シンク上に渡して使用。伸縮フレームで幅を調整。近年の主流 |
| 家庭用 | スリム・縦型 | 奥行を活かした細長い形状。狭いキッチン向け |
| 家庭用 | 2段・多段型 | 上段に皿、下段にコップなど。フレーム剛性が重要 |
| 業務用 | 食器洗浄カゴ・給食用 | 食洗機・洗浄機に投入する角型かご。積み重ね・水抜けを重視 |
| 業務用 | 食洗機用ラック・小物かご | 皿立て、グラスラック、小物用の蓋付きかごなど |
部位で見ると、バスケット本体、ディッシュスタンド(皿立て)、コップ立て、箸立て、フック類がワイヤーフォーミング品、トレーがプレス・板金品、脚部の滑り止めがシリコンや樹脂の部品という構成が一般的です。線材部分が製品の骨格と印象を決める要素であり、OEMではここを作り込むことが商品の質に直結します。


3. 「良い水切りかご」を決める設計要素
消費者レビューで評価が分かれるポイントは、実はほとんどが線材の設計に起因します。企画段階で押さえておきたい要素を整理します。
線径とフレーム剛性
本体の縦線はφ2〜3mm、フレームや脚はφ4〜5mm程度が家庭用の目安です。細すぎると食器を載せたときにたわみ、太すぎると重く高価になります。伸縮型は可動部があるため、フレーム側に十分な剛性を持たせる必要があります。
ワイヤーピッチ
皿や茶碗が「立つ」かどうかは、線の間隔で決まります。皿立て部は20〜25mm前後、底面は小物が落ちない間隔を確保するなど、想定する食器に合わせた設計が必要です。日本の食器(茶碗・汁椀・小鉢)に合うピッチは、欧米向けの製品とは異なります。
溶接点の処理と端部
「錆びた」というレビューの多くは、材質ではなく溶接部の焼けや線材端部の処理不足が原因です。溶接点の数を減らす設計、端部を内側に曲げる処理、研磨仕上げによって、見た目と耐久性が大きく変わります。
水の流れと接地
底面の傾斜や、トレーへの水の落とし方、脚部の接地面積によって、水垢や滑りやすさが変わります。トレーレスで水をシンクに流す構造も人気があります。
| 部位 | 線径の目安(SUS304) | 設計上の留意点 |
| 本体縦線・底線 | φ2.0〜3.0mm | ピッチと剛性のバランス。皿の重量で沈まないこと |
| 外枠フレーム | φ4.0〜5.0mm | 製品の剛性を決める。伸縮型は摺動部の精度も重要 |
| ディッシュスタンド | φ2.0〜2.5mm | 皿の厚み・直径に合わせたピッチと高さ |
| コップ立て・箸立て | φ1.5〜2.5mm | 着脱式か固定式かで溶接設計が変わる |
| 業務用洗浄かご | φ3.0〜5.0mm | 積み重ね強度、洗浄機の水流に耐える剛性 |
※線径は設計検討の出発点となる参考値です。製品サイズ・用途・コスト目標に応じて調整します。
4. 材質と仕上げ|SUS304と電解研磨
水切りかごに使われるステンレスは、18-8ステンレスとも呼ばれるSUS304が標準です。耐食性・加工性・溶接性のバランスに優れ、家庭用から業務用まで幅広く使われています。
ただし、同じSUS304でも仕上げによって製品の寿命と印象は大きく変わります。特に重要なのが電解研磨です。
- 溶接焼けの除去:溶接部に残る酸化皮膜を取り除き、錆の起点をなくす
- 表面の平滑化:微細な凹凸を減らすことで水垢やヌメリが付きにくく、拭き取りやすくなる
- 光沢と清潔感:ワイヤー製品特有のシャープな光沢が出る
海外製の安価な製品では、溶接後の処理が省略されていることが多く、使用数か月で溶接点から茶色い錆が出るケースが見られます。「日本製」を掲げる商品にとって、この仕上げ工程の有無は品質の差として消費者に伝わる部分です。
5. ワイヤーフォーミングでつくる製造工程
水切りかご・食器かごの線材部分は、次の工程で製造されます。
- ① 線材調達:SUS304線材(φ0.8〜8mm)を製品仕様に合わせて手配
- ② 切断・曲げ・フォーミング:縦線・横線・フレームを所定の長さと形状に成形。皿立てのような複雑形状も線材の連続曲げで対応
- ③ 溶接:格子の交点やフレームとの接合をスポット溶接・突合せ溶接で行い、かご形状に組み上げる
- ④ 電解研磨:溶接焼けを除去し、表面を平滑化
- ⑤ 組立:トレー、脚部の滑り止め、コップ立てなどの付属パーツを組み付け
- ⑥ 検査・梱包:寸法・外観・溶接強度の確認後、個装・化粧箱・ケース単位で梱包
この工程を一社で完結できるかどうかが、OEMにおける品質管理と納期の安定性を左右します。工程ごとに委託先が分かれると、不良の原因追跡や仕様変更への対応に時間がかかりやすくなります。
6. OEMで対応できること
OEMで対応できる主な内容は次のとおりです。
- お客様のブランド名での供給(PB)
- 既製設計をベースにした寸法変更(幅・奥行・高さ・段数)
- ディッシュスタンド形状、コップ立て、フック類のオリジナル設計
- 線径・ピッチの変更による剛性やコストの調整
- 電解研磨仕上げ、個包装・化粧箱仕様など販売形態に合わせた梱包
- 小ロットでの試作から量産まで
当社の対応範囲の中心は、バスケット・スタンド・フレームなどのステンレス線材部分です。トレーや樹脂・シリコン部品を組み合わせた完成品としての供給についても、仕様に応じてご相談ください。
7. 想定する取引先と製作パターン
これまでのご相談をもとに、OEMが成立しやすいパターンを整理します。
①生活雑貨・インテリアブランドのオリジナル水切りかご
ブランドの世界観に合わせた寸法と意匠。細めの線径でシャープに見せる、トレーレスで水を流す構造など、意匠性と機能を両立する設計が求められます。
②通販・カタログ企業のPB商品
「燕三条製・日本製」を訴求するPB。既製設計をベースに寸法や付属パーツを変えることで、開発期間とコストを抑えた展開が可能です。
③厨房機器・給食設備向けの業務用食器かご
洗浄機の規格に合わせた角型かご、積み重ね対応、太径線材による高剛性。数量がまとまりやすく、仕様が明確な領域です。
④システムキッチン・住設メーカーの付属バスケット
シンクや収納の寸法に合わせた専用設計。継続的な供給と品質の安定が重視されます。
⑤ホテル・飲食チェーンの什器
店舗数分の同一仕様品を安定供給。グラスラックや小物かごなど、既製品にないサイズが多い領域です。
8. シンドーの一貫生産体制
株式会社シンドーは、1947年創業のステンレス線材加工メーカーです。新潟県燕三条エリアを拠点に、SUS304線材(φ0.8〜8mm)の自社調達から、曲げ・フォーミング・溶接・電解研磨・組立・検査・梱包までを一貫して手がけています。
燕三条にはキッチン用品のOEMを受ける企業が多くありますが、その多くはプレス・絞り・鋳造を主体としています。当社は線材加工に特化しているため、水切りかご・食器かごのようなワイヤー製品について、線径の選定からピッチ設計、溶接、仕上げまでを製造の視点で提案できることが特長です。
材料を自社で調達しているため、線径や数量の変更に柔軟に対応でき、材料待ちによる納期遅れも抑えられます。また、工程が社内で完結していることで、試作段階での修正や量産時の品質管理を一元的に行えます。
9. OEMの進め方|企画段階からの相談も可能
図面がなくても、ポンチ絵や既製品のサンプル、「このサイズ感でこの価格帯で」といったイメージからのご相談で構いません。一般的な流れは次のとおりです。
- ① ヒアリング:販売チャネル、想定価格、寸法、意匠イメージ、数量の目安を確認
- ② 設計提案:線径・ピッチ・構造・仕上げを含めた仕様案と概算をご提示
- ③ 試作:実物で使用感・見た目・強度を確認。必要に応じて修正
- ④ 量産:仕様確定後、検査基準を取り決めて量産・梱包・納品
自社製品を持つメーカーとして、企画段階から「この構造は溶接点が増えてコストが上がる」「このピッチでは茶碗が立たない」といった実務的な助言ができるのが、当社にご相談いただく利点です。
10. よくある質問
Q. 最小ロットはどれくらいですか?
A. 製品の仕様によって異なりますが、試作は少量から対応しています。量産ロットは製品サイズと工程数を踏まえてご相談ください。
Q. トレーや箸立てまで一式で頼めますか?
A. 線材で構成されるバスケット・スタンド・箸立て・フック類は当社で製作します。トレーや樹脂部品を含めた完成品の供給については、仕様に応じてご相談ください。
Q. 既存商品の改良だけでも可能ですか?
A. 可能です。現行品のサンプルをもとに、錆びやすい溶接部の改善、ピッチ変更、剛性向上など、部分的な設計変更にも対応しています。
Q. 海外品からの切り替えでコストは上がりますか?
A. 単価のみを比較すると上がるケースが多いですが、不良・返品・レビュー低下による損失や、輸送・在庫リスクを含めた総コストで判断されるお客様が増えています。仕様を整理すれば価格差を縮められる場合もあります。
Q. 業務用の食器洗浄カゴも対応できますか?
A. 対応しています。洗浄機の規格寸法、積み重ねの有無、線径をお知らせいただければ設計します。
11. まとめ
水切りかご・食器かごは、線径・ピッチ・溶接・仕上げという線材加工の要素が、そのまま商品の品質と評価に表れる製品です。仕入れ品では差がつきにくい市場だからこそ、ワイヤー製品の製造に特化したメーカーと直接組むOEM・PBには意味があります。
株式会社シンドーは、自社で水切りかご・洗浄かごを製造・販売してきた経験と、線材調達から梱包までの一貫生産体制を活かし、企画段階から量産までご一緒します。オリジナル商品の開発、既製品の改良、業務用食器かごの製作など、お気軽にお問い合わせください。
