ステンレス製「捕獲かご」のオーダーメイド製作

アライグマ、ハクビシン、タヌキ、イタチ——中型獣による農作物被害や住宅への侵入被害への対策として、箱わな型の「捕獲かご」は最も広く使われている捕獲手段のひとつです。しかし市販されている捕獲かごは塗装仕上げのスチール製が主流であり、屋外に据え置いて繰り返し使用する現場では、錆による劣化と作動不良が避けられない課題となっています。

本記事では、ステンレス線材の加工という視点から、捕獲かごに求められる仕様、耐久性を高めるための設計の考え方、そして特注・OEMで製作する際の進め方を解説します。

1. 捕獲かごとは|箱わな型捕獲器の基本と種類

捕獲かごは、金網で囲われた箱状の本体の内部に餌を仕掛け、侵入した動物が踏板やトリガーに触れることで扉が閉まる構造の捕獲器です。行政の資料では「はこわな」「檻(おり)」と表記されることもあります。作動方式によって、おおむね次のように分類されます。

  • 踏板式:底面に設けた踏板を踏むことで扉が落下する方式。動物を傷つけにくく、迷い猫の保護など保護目的の設置にも用いられます。
  • 吊り餌式:餌を引っ張る動作でトリガーが外れる方式。ネズミやイタチなど、体重の軽い小型獣の捕獲に向きます。
  • 片扉式/両扉式:両扉式は動物が「通り抜けられる通路」と認識しやすく、警戒心の強い個体に効果があるとされます。

本体寸法は対象動物によって大きく変わり、胴長の小型獣向けでは幅130mm程度、ハクビシンやアライグマなどの中型獣向けでは幅370mm×奥行800mm程度、イノシシなどの大型獣向けでは1mを超えるものまで幅があります。

他のわなとの違い

わなは、捕獲従事者の間で「檻」と呼ばれる箱わな・囲いわなと、「くくりわな」に大別されます。捕獲かご(箱わな)は、次のような特徴から、免許取得後まもない方や地域ぐるみの対策でも扱いやすい猟具として広く普及しています。

種類特徴製品としての性質
箱わな(捕獲かご)餌で誘引し、扉の閉鎖で確保する。錯誤捕獲時に解放しやすい完成品として製造・流通する。金網とフレームの構造体
囲いわな屋根のない囲いで囲い込む。大型獣・複数頭に対応パネル部材を現地で組み立てる構造
くくりわな足を締めて捕獲する。多数を仕掛けやすい輪の内径など法令上の寸法規定がある小型部品

箱わなは餌を切らさずに誘引を続ける運用が前提となるため、餌の水分や糞尿にさらされる時間が長く、それだけ材質の耐久性が問われる猟具でもあります。

2. 屋外で使う捕獲かごの最大の課題は「錆」

捕獲かごは、農地の周縁や獣道、畜舎の周辺、住宅の軒下などに数週間から数か月にわたって据え置かれます。雨、泥、餌の水分、そして捕獲個体の糞尿に常時さらされる環境です。塗装仕上げのスチール製では、搬入時の擦り傷、扉のスライド部、溶接部などの塗膜が弱い箇所から錆が進行します。錆の進行は、単に見た目の問題では終わりません。

  • 扉やトリガーが錆で固着し、不作動・誤作動の原因になる
  • 洗浄・消毒がしづらく、繰り返し使用する際の防疫上のリスクになる
  • 数シーズンで更新が必要になり、購入費と廃棄費が積み上がる

材質・仕上げごとの特性を整理すると次のようになります。

材質・仕上げ初期コスト耐食性洗浄・消毒への適性想定される使い方
スチール+塗装塗膜が傷むため不向き短期・単発の設置
スチール+めっき可(傷部から発錆)通年設置。更新前提の運用
ステンレス(SUS304)適する長期・繰り返し使用、貸出運用

自治体やJAが住民へ貸し出す運用、駆除業者が複数現場を回して使い回す運用では、更新頻度と手入れの手間を含めた総コストで比較すると、ステンレス製が有利になるケースが多くあります。

3. なぜSUS304が捕獲かごに適しているのか

SUS304はクロムとニッケルを含むオーステナイト系ステンレス鋼で、表面に生成する不動態皮膜によって錆びにくい性質をもちます。捕獲かごという製品に当てはめると、次のような利点があります。

  • 屋外に常設しても赤錆が出にくく、外観と強度を長期にわたって保てる
  • 高圧洗浄や薬剤による消毒に耐えるため、獣舎や施設内でも衛生的に運用できる
  • 溶接性が良く、金網とフレームを金属的に一体化できる。塗装被覆に頼らない接合が可能
  • 塗り直しなどの再塗装メンテナンスが不要で、保守の手間がかからない
  • 使用を終えた後もスクラップとしての価値が残り、廃棄コストを抑えられる

なお、海岸部など塩分が付着し続ける環境で使用する場合は、線径や表面処理の仕様をあわせて検討する必要があります。設置環境が厳しい場合は、設計段階でご相談ください。

4. 設計ポイント|対象動物別の線径・目合いと構造

捕獲かごの性能は、線径(網やフレームに使う線の太さ)と目合い(網目の寸法)でほぼ決まります。細すぎれば噛み破られ・こじ開けられ、太すぎれば重量と価格が跳ね上がります。対象動物ごとの目安は次のとおりです。

対象動物本体寸法の目安線径の目安目合いの目安
ネズミ・イタチ等の小型獣W130×H130×D460mm前後φ1.6〜2.3mm10〜13mm
ネコ・ハクビシン等の中型獣W280×H280×D650mm前後φ2.6〜3.2mm20〜25mm
アライグマ・タヌキ・キツネW370×H370×D800mm前後φ3.2〜4.0mm25〜50mm
イノシシ幼獣・シカ等の大型獣W600×H800×D1500mm以上φ4.0〜8.0mm50mm前後

※上記は設計検討の出発点となる目安値です。実際の仕様は設置環境と運用方法に応じて調整します。

寸法以外に検討すべき設計要素

  • 脱出防止:扉のロック機構、扉の落下ストローク、鼻先や爪をかけられない隙間管理
  • 作動の信頼性:トリガーに使うばねの特性と踏板の支点位置。ばね用ステンレス鋼線を組み合わせることで、屋外環境でもへたりにくい機構にできます
  • 取り扱い性:持ち運び用の取っ手、折りたたみ構造や入れ子構造(スタッキング)による運搬性・保管性の確保
  • 衛生性と安全性:底面の水抜き、角部の丸め、バリのない仕上げ(作業者の手や動物の負傷防止)
  • 標識の取付:猟具には標識の表示が義務づけられているため、確実に取り付けられる平面や金具を本体側に設けておく

法令面で押さえておきたい点

箱わなを用いた捕獲には、わな猟免許の取得または有害鳥獣捕獲の許可が必要です。また、使用する猟具ごとに、見やすい場所へ住所・氏名等を記載した標識を表示する義務があります。標識は金属製またはプラスチック製で、文字の大きさは縦横ともに1cm以上とされています。製品側に標識の取付部をあらかじめ標準装備しておくことで、現場での表示漏れを防ぐことができます。

5. 線材加工でつくる捕獲かごの製造工程

捕獲かごは、線材から一連の工程を経て完成品になります。

  1. 材料調達:SUS304線材(φ0.8〜8mm)の手配
  2. 切断・曲げ・フォーミング:フレーム、扉枠、トリガー部品、取っ手などの成形
  3. 溶接:溶接金網の製作、フレームと金網の接合、各種金具の取付
  4. 表面処理・酸洗・電解研磨:溶接部の焼け取り、バリや突起の除去
  5. 組立・検査・梱包:可動部の作動確認、寸法検査、出荷梱包

このうち、見落とされがちですが重要なのが工程4です。ステンレスは溶接時に生じる酸化スケール(溶接焼け)が残ったままだと、その部分の耐食性が低下し、せっかくステンレスを使っても溶接部から錆が出てしまいます。酸洗や電解研磨によって適切に処理することが、長寿命化の前提条件になります。

6. 材料調達から完成品までの一貫生産体制

株式会社シンドーは1947年の創業以来、新潟県三条・燕地区でステンレス線材の加工を手がけてきました。線材の自社調達から、曲げ・フォーミング・溶接・表面処理、そして組立・検査・梱包までを社内で一貫して行える体制を備えています。

  • 材料手配から完成品まで一社で完結するため、工程間の受け渡しによるロスがなく、納期とコストを一元的に管理できます
  • φ0.8〜8mmまでの線材を扱うため、細い網目からフレームの太物までを一台の製品の中で最適に組み合わせられます
  • 試作1台から量産まで対応。図面がない場合も、ポンチ絵や現物サンプルから形にしていくことが可能です
  • 溶接金網、ストーブガード・ヒーターガード、ファンガード、洗浄かごなど、線材による「かご・ガード形状」製品の製作実績を蓄積しています

また、捕獲かごは自治体の予算年度や被害の発生時期に合わせて、まとまった数量が短期間に必要となる製品です。材料を自社で調達している体制は、こうした需要の波に対して材料手配から着手できるという点でも強みになります。

捕獲かごは、金網・フレーム・可動機構・ばね部品という複数の要素を組み合わせた製品です。これらを別々の外注先に分けると、公差の積み上がりによって扉が滑らかに動かない、という不具合が起きがちです。一貫生産では機構全体を通して設計・確認できるため、作動の安定した製品に仕上げられます。

7. 有害鳥獣以外の用途にも対応

「捕獲かご」の考え方と製造技術は、鳥獣対策以外の分野にも応用できます。

水産・漁具分野

カニかご、タコかご、もんどりのフレーム・骨組み。海中で使用するため耐食性が直接寿命に関わります

環境調査・研究分野

生物調査用の小動物トラップ、実験・観察用ケージ。個体を傷つけない仕上げが求められます

施設・動物関連

動物病院、動物園、保護施設の収容かご・輸送かご。洗浄と消毒を前提とした材質選定が必要です

畜産・養殖分野

飼育補助具、選別かご、蓄養かごなど

8. 試作から量産までの進め方

図面がある場合はそのまま、ない場合はポンチ絵や現物サンプルをもとに、対象動物・設置環境・想定数量を伺いながら仕様をすり合わせていきます。そのうえで試作品を製作し、実地での評価を経て仕様を確定し、量産・継続供給へ移ります。鳥獣対策資材メーカーや商社さまの自社ブランド品として、OEM生産をお引き受けすることも可能です。

9. よくある質問

小ロットでも製作できますか?

試作1台からお引き受けしています。評価用の少数製作から量産移行まで、同じ体制で対応します。

既製品をベースに寸法だけ変えることはできますか?

可能です。既存品の課題(錆びる、扉が固着する、寸法が合わない等)を伺い、改良した仕様でご提案します。

目合いや線径はどのように決めればよいですか?

対象動物と設置環境をお知らせいただければ、当社の実績をもとに仕様をご提案します。

折りたたみ構造やスタッキングには対応できますか?

対応可能です。運搬・保管効率を優先する場合は、設計段階から構造をご相談ください。

塗装品からステンレスに切り替えるとコストはどうなりますか?

初期費用は上がりますが、更新頻度・メンテナンス・廃棄費用を含めた総コストで比較されることをおすすめします。

組立や梱包まで任せられますか?

組立・検査・梱包まで社内で対応しています。完成品としての納入が可能です。

10. まとめ|捕獲かごは「線材から」考えると変わる

捕獲かごは構造そのものは単純な製品ですが、屋外で長期間、繰り返し確実に作動しなければならないという点で、材質と機構の設計が性能を大きく左右します。錆びない材質を選ぶこと、そして溶接部まで含めて適切に処理することが、現場で使い続けられる捕獲かごの条件です。

株式会社シンドーは、ステンレス線材の調達から曲げ・溶接・表面処理・組立までを一貫して行い、用途に合わせた捕獲かごを1台から量産まで製作いたします。既製品では要件が満たせない、既存品の錆や作動不良を解決したいといったご相談も歓迎です。図面やポンチ絵をお持ちのうえ、お気軽にお問い合わせください。